京扇子

京扇子とは、主に京都府や滋賀県で作られている伝統工芸品です。1000年以上も続く長い歴史を持ち、熟練の職人の手によって丁寧に作り上げられる風情ある美しい扇子は、扇の面に伝統的な絵付けが施され、京都で採れる高品質な竹を使用しており、美術品として価値の高い伝統工芸品です。今回はそんな京扇子について詳しく特集していきます。

由来・歴史

京扇子の歴史は、今からおよそ1200年ほど前、平安時代頃にはじまったと伝えられています。もともとは、「木簡」と呼ばれる、文字を書くために使用されていた縦長の薄い木の板から扇子が誕生したと言われています。紙を折りたたむことができるため、和歌などを書くメモのような用途で使用されていました。

当時は身分の高いものしか使用ができず、主に貴族の間で使用されていました。平安時代中期に入ると、夏に蝙蝠扇が良く使用されるようになります。扇の骨の部分の本数が5本ほどで、扇を広げた様子が蝙蝠に似ていたことに由来し、このように呼ばれていました。

現在のような豪華な装飾が施されるようになったのは、江戸時代に入ってからです。演劇や茶道などの催しの際に使用され、広く庶民の間で日常使いされるようになりました。現在は伝統的なモチーフに加え、モダンでファッショナブルなデザインの扇子や、ブランドとコラボレーションしたものも販売され、多くの人々から愛され続けています。

特長

京扇子の特徴として、京扇子という呼び名を組合のみが使用できること、京都で採れる上質な竹を使用して作られていること、完全分業制を採用していることなどが挙げられます。京都の丹波地方では、上質な真竹が採れるため、高品質な扇子を作ることができます。京都内で品質の良い材料が採れることは、1000年以上も続く京扇子の歴史を築くことができた大きな要因の一つと言えるでしょう。

また、京扇子は完全分業制のため、多くの熟練の職人たちがそれぞれの技術を活かすことによって仕上げられます。紙、骨、装飾の部分をそれぞれ異なる職人が担当します。すべての工程を合わせると、約80以上もの工程に及び、京扇子が出来上がるのに長い時間と高い技術を要します。

京扇子は他の扇子よりも扇の骨の本数が多いため丈夫で、折り畳みもなめらかに行えるため人気が高く、趣深い工芸品です。綺麗に開閉できる様子は風情があり、大変美しいことも京扇子が多くの人々から支持される要因の一つです。

作り方

京扇子の作り方について、京都扇子団扇商工協同組合ウェブサイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方は京都扇子団扇商工協同組合の公式サイトをご覧ください。

(1) 扇骨加工(せんこつかこう)

(1-1) 胴切(どうぎり)

(1-2) 割竹(わりたけ)

(1-3) せん引 (せんびき)(割竹を必要な厚さまで薄く削ぐ(へぐ))

(1-4) 目もみ(要を通す穴をあける)

(1-5) あてつけ(扇骨成型)

竹材に要穴(かなめあな)をあけそれに串を通し数十枚を板のようにして、独特の包丁で削り成型します。丁寧な「あてつけ」作業とその後の「磨き」(みがき)が京扇子ならではの光沢を生み出します。

(1-6) 白干し(しらぼし)

ほぼ完成された扇骨(せんこつ)を屋外で日光にさらし、乾燥させる。

(1-7) 磨き(みがき)

(1-8) 要打ち(かなめうち)

(1-9) 末削(すえすき)(紙の間に入る扇骨を薄く細く削る)

折目(おりめ)を施した地紙(じがみ)(扇面(せんめん))の中に入れる中骨(なかぼね)の部分を薄くするため、一枚一枚を鉋(かんな)で削る。

(2) 地紙加工(じがみかこう)

(2-1) 合わせ(あわせ)

芯紙(しんがみ)といわれる極めて薄い和紙を中心にして両側に皮紙と呼ばれる和紙を貼り合わせます。後の工程で芯紙が二つに分かれその隙間に扇骨が入ります。また、扇子に用いる紙は地紙と呼びます。

(2-2)乾燥

(2-3) 裁断

(3) 加飾(かしょく)

(3-1) 箔押し(はくおし)

糊を引いた上に一枚ずつ置かれる金箔。箔は極めて薄く取り扱いには注意が必要です。地紙一面に箔を押す<無地押し(むじおし)>は一見簡単なようで実は高度な技術を要します。

(3-2) 上絵(うわえ/手描き)

一枚一枚絵師(えし)によって手描きされる地紙。伝統的工芸品・京扇子はこうした<手描き>の他、古来からの技法である「切型摺り込み(きりがたすりこみ)」、「版木つき」「木版画摺り」により彩られます。

(3-3) 木版画摺り(もくはんがずり)

(4) 折加工(おりかこう)

(4-1) 折り(おり)

折型(おりがた)(型紙(かたがみ))に挟み込まれ、しっかりと把み(つかみ)進められた平らな地紙に折り目が付けられます。

(4-2) 中差し(なかざし)

(4-3) 万切(まんぎり)

(5) 附け加工(仕上げ)

(5-1) 中附け(なかつけ)仕上げ加工

芯紙(しんがみ)が二つに分かれて出来る隙間へ糊を引いた中骨(なかぼね)が手早く差し込まれます。この後、正しく位置が決められ拍子木(ひょうしぎ)で強く叩きこなされます。

(5-2) 万力掛け(まんりきがけ)

(5-3) 親あて(おやあて)

完成

出典:京都扇子団扇商工協同組合

いかがでしたか?

主に京都府や滋賀県で作られている伝統工芸品、京扇子についての特集でした。京都の地で採れる良質な材料のおかげで1000年物時を経て長く発展してきた京扇子は、現在もその技術を受け継いだ熟練の職人によって80を超える作業工程を経て完成される美しい伝統工芸品です。興味のある方はぜひ一度お手に取ってみてはいかがでしょうか。