二風谷イタ

二風谷イタとは、主に北海道沙流郡平取町二風谷で作られている伝統的な木彫りの平らなお盆です。アイヌの民族によって作られてきた二風谷イタは、アイヌに伝わる伝統の模様が木彫りで彫られており、暮らしを支える日用品でした。今回はそんな二風谷イタにつて、詳しく特集していきます。

由来・歴史

二風谷イタについて、幕末頃に松前藩が行った幕府への献上品の中に沙流川流域のイタが含まれていたとの記録が残っており、少なくともこれ以前からアイヌ民族の間で二風谷イタが作られてきたことがわかります。

明治時代になると、貝澤ウトレントクと貝澤ウエサナシという人物たちがアイヌの伝統的なウロコのモチーフを彫り込んだ作品を札幌にて販売していたとの記述が『平取町史』に残っています。

この時期作られたとされる作品は大変貴重なものとして、現在も平取町立二風谷アイヌ文化博物館に保存されています。また、2013年には経済産業大臣から伝統的工芸品に指定されました。

模様の種類

  • モレウノカ 渦巻の文様
  • アイウシノカ 棘の文様
  • シクノカ 目の文様
  • ラムラムノカ ウロコ文様

特長

二風谷イタの特徴として、長きにわたり受け継がれてきたアイヌ民族の代表的な紋様を木に彫り込んでいる点や、北海道の広大な土地で採れたクルミやカツラの木を長い時間をかけて乾燥させたものを材料として使用している点などが挙げられます。

二風谷イタに彫り込まれる伝統の模様の種類は多く、魚のウロコ、渦巻き、棘などといった自然のものをモチーフにしています。アイヌの伝統文化においては、マキリと呼ばれる刃物の鞘や、衣服、織物など日常の中で使用するものを伝統の文様で装飾する傾向が強く、二風谷イタも美しい装飾が施されています。

アイヌでは適齢期を迎えた男性が、自分の刃物で彫った木彫り作品を意中の女性へ贈るという風習があったそうで、当時から二風谷イタは贈答品や商品としての価値が高かったことがわかります。現在は二風谷民芸組合がその伝統を継承し、その伝統を守り続けています。

作り方

二風谷イタの作り方について、JTCO日本伝統文化振興機構ウェブサイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方はJTCO日本伝統文化振興機構の公式サイトをご覧ください。

二風谷イタの製造工程は、型取り・文様彫り、ウロコ彫りなど多岐にわたっており、それぞれの工程において手作業となっています。

【1】底取り
荒彫りした板の内側を皮裁ち包丁で同じ深さに削って、彫る面を整えていきます。内側の縁のラインも丸ノミで美しく仕上げます。

【2】裏面仕上げ
裏面の角を面取りしていきます。これで板の形取りが完成です。

【3】文様彫り
文様をデザインし、そのラインに沿って三角刀で線取りをしていきます。次に丸ノミで彫り下げ、立体感と陰影を出していきます。

【4】二重線彫り
文様のラインをさらに加え、彫りの表情を豊かにしていきます。

【5】ウロコ(ラムラムノカ)の線入れ
モレウノカ(渦巻き)やシクノカ(目の形)の間を埋めるように、木目を縦方向にして、印刀でウロコの文様となる枡目を引いていきます。
このウロコ彫りをひとつの作品に多用するのが、二風谷イタの特徴です。

【6】ウロコ(ラムラムノカ)の起こし
印刀の裏刀でウロコを一つひとつ起こしていきます。枡目の半分が彫られることになります。ウロコの面積の大きさと独特の表情が、二風谷イタならではの表情を作ります。

【7】仕上げ
細部の調整をして完成です。

出典:JTCO日本伝統文化振興機構

いかがでしたか?

主に北海道沙流郡平取町二風谷で作られている伝統的な木彫りの平らなお盆、二風谷イタについての特集でした。熟練の職人の手によって彫られるアイヌ民族の代表的な紋様はとても美しく、北海道の自然や生命を感じさせるような魅力的な工芸品である二風谷イタは、かつては贈答用としても活躍し、現在も美術的価値の高い伝統工芸品として多くの人々から支持されています。興味のある方はぜひ一度お手に取ってみてはいかがでしょうか。