香川漆器

香川漆器は、香川県高松市を中心に生産される漆器です。奥ゆかしい光沢となめらか触り心地、華やかな模様など、とても魅力の詰まった伝統工芸品です。香川漆器の塗り方には5つの手法があり、それぞれ蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、象谷塗(ぞうこくぬり)、後藤塗(ごとうぬり)があげられ、これらは国の伝統工芸品として指定されています。塗り方が5通りもあるなんて、どれを選べばいいのか迷ってしまいますね。今回はそんな香川漆器の魅力について特集していきます。

由来・歴史

香川漆器の歴史は江戸時代後期から始まったと言われています。高松藩主である松平家からの手厚い保護もあり、発展していきました。江戸時代後期に入ると、香川漆器の生みの親とされる玉楮象谷(たまかじぞうこく)という人物が、中国やタイの漆器を研究し、独自の技とあわせ新しい製法を編み出しました。それぞれ彫漆(ちょうしつ)、象谷塗(ぞうこくぬり)、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、後藤塗(ごとうぬり)とよばれ、現在もその手法は受け継がれています。

種類

後藤塗(ごとうぬり)

後藤塗という名は、発案者である後藤太平という人物から採られています。後藤太平は高松藩士の家に生まれ、父の影響で絵画、茶、骨董といった中国文化への関心が強く、自ら朱の漆を使って作品を作っており、これが後藤塗のはじまりとなりました。優雅な朱の色が大変優雅で美しいのが印象的です。

存清(ぞんせい)

存清の技法は東南アジアから中国を経由して日本に伝わったと言われています。漆が塗られた面に赤や緑、黄色の鮮やかな漆で紋様が描かれている美しい工芸品です。存清漆器がはじめて日本に入ってきたのは室町中期頃と言われています。当時は海外の珍しい品として、一部の貴族の間で人気がありました。江戸時代後期、玉楮象谷という人物が存清漆器を研究し、日本の技術を加え、日本風の存清塗りを編み出しました。

蒟醤(きんま)

香川漆器の代表的な塗り。蒟醤とはタイの植物の実のことであり、紋様を刀で彫ってそのくぼみに色漆を埋め込み、平らに磨き上げることで完成させます。タイ、ミャンマーから伝わり、玉楮象谷が技法を研究し日本の技術と合わせ、それを藤川黒斎が受け継ぎ香川の蒟醤漆器を確立させました。

象谷塗(ぞうこくぬり)

象谷塗の名は、発案者である玉楮象谷にちなんで名づけられました。下地に漆を繰り返し塗るという独特の技法をもって制作されます。象谷塗独特のも模様や陰影は、長年使うことによってさらし渋みが増すとても特徴的な漆器です。

彫漆(ちょうしつ)

彫漆は、分厚く塗り重ねた漆を彫刻することによって作られる漆器です。様々な色の漆を何十回も、多いもので百回以上も塗り重ねることもあります。塗り重ねたことによる立体感が印象的な漆器です。

特長

香川漆器は、使用を重ねれば重ねるほど風合いが出てきて渋みが増すという特徴があり、香川漆器独特の色調がさらに奥深いものへと変化していきます。五種類の異なった制作技法が存在し、国の伝統工芸品として指定されています。現在でも食器やお盆、お椀、花瓶など様々な商品が制作され、販売されています。漆器はその見た目の美しさの他にも、熱を伝えにくく、傷みにくいといった利点があり、汁物を入れるための器などに適しています。

いかがでしたか?

五種類もの技法を持つ香川漆器についての特集でした。香川漆器はその美しい見た目に加え、熱が伝わりにくいといった性質があります。あつあつのスープや汁物を頂くのに大変適した工芸品です。ぜひ日常や食卓にとりいれてみてはいかがでしょうか。