小石原焼きとは、福岡県朝倉郡東峰村でつくられる伝統の焼き物のことです。器を「ろくろ」で回転させながら均一に模様を入れていくのが特徴的です。かつては壺など大型の陶器の需要が大きかったため、大きな登り窯が活用されていました。
素朴で落ち着きのあるデザインの焼き物は、生活に良く馴染み使いやすいです。今回はそんな焼き物、小石原焼きについてご紹介します。
由来・歴史
小石原焼きの歴史は実に350年以上もの歴史があります。小石原の土地は陶器づくりに最適な土と窯の火を焚くための木材が豊富に手に入る、焼きものづくりにはまさにぴったりの土地でした。小石原焼きがはじまったきっかけは、1665年に八之丞という人物が小石原で上質な陶土が採れることを発見し、中野皿山で陶器づくりをはじめたことです。
この土地の名前にちなんで、初期の小石原焼は中野焼きと呼ばれていました。小石原の土が磁器生産には合わなかったのか、中野焼きは一時期途絶え掛けます。しかし、当時作られていた茶陶、高取焼の制作方法から学びを得て、小石原焼きは発展と進化を遂げていきました。
その後はブリュッセルの万国博覧会で高い評価を得るなどし、世界へも輸出されるようになりました。1975年には陶磁器として日本で初めての伝統工芸品となり、いまも人々の日常に溶け込んでいます。
種類
飛び鉋
赤土の上に白の化粧土をかけた後、器に鉋の刃先をあて削っていき、模様を描く。
刷毛目
化粧土をかけた後、ろくろを回転させながら刷毛をあてて模様をつける。
櫛目
化粧土をかけた後、櫛のような道具で波状などの模様をつける。
流し掛け
ろくろを回転させつつ、器の表面に釉薬を等間隔で流していき模様を付ける。
打ち掛け
柄杓などで釉薬を器の表面に少しずつかける。
指描き
化粧土をかけた後、乾かないうちにろくろを回転させながら指で模様を描く。
特長
小石原焼の特徴は、規則正しい間隔の美しい幾何学的な模様や、土の質感を感じさせる素朴な風合いなどがあげられます。多岐にわたる模様の種類、その模様を付ける方法もそれぞれ異なり、個性あふれる伝統工芸品と言えます。
自然な色味や主張の激しすぎないデザインは食卓によく馴染み、落ち着いた雰囲気を演出します。小石原焼は、1926年に思想家 柳宗悦、河井寛次郎、浜田庄司などによって提唱された「民藝運動」という日常のくらしの中にある美しさに焦点をあてようとする運動により注目され、高い評価を受けました。海外の陶芸家であるバナード・リーチは小石原焼を「用の美の極致」と呼び評価していました。
用の美とは、日用品として人々の暮らしのなかで使用されることでこそ美しさを発揮するといった考えのことです。「用の美の極致」といわれるほど人々の生活の中に違和感なく溶け込み、伝統の技を持って作り上げられている小石原焼は、今なお多くの人々から愛され続けています。
作り方
小石原焼きの作り方について、小石原焼伝統産業会館ウェブサイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方は小石原焼伝統産業会館公式サイトをご覧ください。
土作り
原料になる土を乾燥させ、陶土粉砕機で細かくなるまで砕いていく。これを水と混ぜ、砂は沈み陶土は水に溶けて浮いてくるという性質を利用し、陶土が溶けている水を陶土絞り機にかけ、陶土を取り出します。取り出した陶器を土練機に入れ、圧縮して空気を抜きます。
形作り
陶土をよくこねて、土の中の空気を抜きつつ形を作っていきます。
装飾技法
化粧土と呼ばれる鉄分の少ない白い陶土を塗り、はけや櫛、指などを利用し模様を描いていきます。
焼き上げ
窯に入れて焼き上げます。温度は1000度以上、焼きあがるまで一日以上はかかります。
窯出し
焼きあがって温度が下がったら、窯から取り出します。このとき、乾燥や熱によって窯に入れる前の大きさより二割ほど小さくなっています。
出典:小石原焼伝統産業会館
いかがでしたか?
福岡県朝倉郡東峰村でつくられる伝統の焼き物、小石原焼についてまとめました。規則正しく並ぶ幾何学模様は、熟練の職人の技術でなければ描くことのできないものです。少しでも小石原焼に興味をお持ちになった方は、ぜひ購入してみることをお勧めします。