甲州印伝

甲州印伝とは、主に山梨県甲府市で生産されている、鹿の革を使用して作られる伝統工芸品です。鹿の革の上に漆で模様を付けて作られる甲州印伝は、その見た目の華やかさだけではなく、強度も備えているためかつては鎧や兜などの武具としても加工されていました。かの有名な武田信玄も、甲州印伝を愛用していたと伝えられています。今回はそんな甲州印伝について特集していきます。

由来・歴史

甲州印伝の持つ歴史は長く、江戸時代末期ごろには既に盛んに制作や売買が行われていたといわれています。印伝という名前は、江戸時代に日本を訪れた外国人がインドの装飾品を幕府に献上したことから由来しており、国内で作られたものを「印伝」と呼ぶようになりました。

当時人々の生活の中で革製品が良く使用されるようになり、各所で多くの印伝が作られていましたが、現代まで残っているのは甲州印伝のみです。印伝に漆を塗りはじめたのは、1700年頃からだと伝えられています。肌触りの良い感触が好評で評価が高く、甲州印伝の人気が広がります。

明治時代に入ると博覧会で甲州印伝が勲章を取り、山梨を代表する名産品としてさらに知名度を広げていきました。

種類

甲州印伝は、主に3種類の技法によって製作されます。

漆付け

甲州印伝の技法の中で最も代表的な技法であり、手彫りの模様が描かれた型紙を鹿革の上に置き、漆を刷り込み模様を付けていく技法です。伝統的な模様と漆の調和が大変美しい技法です。

「ふすべ」と読み、鹿革を大きな筒に貼り付け、藁を焚いていぶした後、松脂でいぶして仕上げる独特の方法で色付けをします。古来より一子相伝で受け継がれてきた伝統ある技法です。

更紗

複数の型紙を使用し色を重ねて仕上げる方法です。均等に色を付けていくのに高い技術を要し、難易度の高い技法によって作られています。たくさんの異なった色付けが可能なため、鮮やかな色彩が楽しめるという特徴を持ちます。

特長

甲州印伝の特徴として、鹿の革を漆で模様付けしている点や、長く使い続けることで発色がより良くなっていくため、革の変化を楽しめる点などが挙げられます。甲州印伝の伝統的な模様はさまざまな種類があり、草花やトンボなどの昆虫をはじめ、縁起が良いとされるモチーフが好まれています。

甲州印伝は鹿の革の光沢やなめらかな触り心地など、高級感漂う工芸品であるだけでなく、かつては鎧や兜などの武具に使用されていたほど丈夫で、手入れを行えば末長く使用できるといった面も持ち合わせています。

頑丈な上に鹿の革特有の軽さといった特徴も持っており、他の革製品と比べて使いやすく、最近では有名キャラクターや海外のブランドとコラボした商品も販売しています。ポーチやハンドバッグなど時代のニーズにあわせたファッションアイテムを販売したりなど、伝統工芸品でありつつも普段使いもしやすく、流行りにあわせさらなる進化や発展を遂げています。

お土産や仕入にオススメ

山梨県甲府市で生産されている、鹿の革を使用して作られる伝統工芸品、甲州印伝についての特集でした。長い歴史を持つ甲州印伝は、伝統の技法を現代まで受け継ぎ、現在も伝統に沿ったデザインの商品や、ブランドとコラボしたモダンな商品などを数多く生産し続け、人々から愛され続けています。お土産や仕入れにぴったりです。ご興味のある方はぜひ一度お手に取ってみてはいかがでしょうか。