江戸べっ甲は主に東京都で生産されている伝統工芸品です。南国の海を泳ぐタイマイという名前のウミガメの甲羅を加工しつくられています。2015年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されている江戸べっ甲は、透明な飴色と黒褐色の斑点の模様が特徴的で、古くからくしやかんざしに加工され人々の間で愛用されてきました。
天然の素材を使用しているためひとつとして同じ製品はなく、希少性の高いものと言えます。今回はそんな江戸べっ甲について詳しくご紹介していきます。
由来・歴史
江戸べっ甲の歴史は、江戸幕府が開かれた頃に始まったと言われており、当時は甲羅に単純な細工を施していました。元禄時代に入ると、張り合わせという技術が伝えられたことにより、より繊細で細かい細工を施すことが可能になりました。
簪や髪飾り、櫛など和服と相性の良い服飾品や、三味線の撥など楽器の一部としても使用されています。現在タイマイは絶滅危惧種に指定されているため輸入できる数に制限がかかっており、天然のべっ甲の入手が難しいのが現状です。国内で養殖を行おうという動きもあり、期待されています。
特長
江戸べっ甲の主な特徴は、透き通った飴色の美しさと、斑と呼ばれる黒色の斑点があわさった独特の模様です。タイマイの甲羅は一体につき13枚ありますが、透明な部分は特に希少な部分とされています。一枚一枚は薄めである甲羅を重ね合わせたのち、タイマイの甲羅が持つ熱を与えると変形させ易い特徴を利用し形を整えます。
その後、ヤスリで磨き上げることで製品を完成させます。天然の素材ならではの味わい深い光沢を放つ江戸べっ甲は、つやつやとした触り心地の良さも楽しむことができ、使用すれば使用するほど風合いが増します。日本では昔から鶴や亀は長寿の象徴としてめでたいものとされてきたこともあり、江戸べっ甲は人々から愛されてきました。
作り方
江戸硝子の作り方について、東京都産業労働局のサイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方は東京都産業労働局公式サイトをご覧ください。
削り
がんぎ、小刀、やすり等を用いて手作業にて表面を整える。
張り合せ
つぎ板、金板、金ばし、圧締器(あっていき)等を用いて、熱を加えながら接着する。
型作り
糸ノコ、小刀、やすり、トクサ等により行う。
出典:東京都産業労働局
いかがでしたか?
東京の伝統工芸品、江戸べっ甲についての特集でした。縁起が良いと言われている亀の甲羅を素材として使用し、完成させられる美しい艶と光沢を放つ江戸べっ甲の製品は熟練の技をもちいて制作されていることが感じられます。昔から貴族や庶民の間で愛されてきた江戸べっ甲の簪や髪結い櫛をはじめ、現代のニーズにあわせメガネのフレームや万年筆などにも加工されています。
天然素材ということもあり、時間がたつと艶や光沢が落ちていきますが、手入れをすればまた輝きを取り戻します。伝統工芸品の手入れをしながら長い間愛用していくというのも、趣があって良いですね。興味がある方はぜひご購入されてみてはいかがでしょうか。