東京アンチモニー工芸品は、東京で古くから作られてきた伝統工芸品です。アンチモニーはアンチモンと鉛と錫でによる合金を指し、この合金を溶かし加工したものをアンチモニー工芸品と呼びます。
職人の手によって一つ一つ加工が施され、美しい光沢を放ちながら、どことなくレトロな雰囲気のある魅力的な工芸品です。今回はそんな東京アンチモニー工芸品についてご紹介していきます。
由来・歴史
明治維新によって多くの彫刻師や鋳物師が職を失ってしまった結果、武具や金属製造などに移行していきアンチモニー製品の製造へと移行しました。職人の多くは東京に集まり活動していたため、東京アンチモニー工芸品は特産品として一躍有名になりました。
明治期になると組合が設立されたり、富国強兵など国の方針によって外貨の調達および輸出が重要視されるようになり、多くのアンチモニー工芸品が輸出されアンチモニー産業は大きく発展します。第二次世界大戦後にドル高になった際、東京アンチモニー産業はその影響を強く受けてしまったため国内向け産業へとシフトしていき、トロフィーやメダルなどの製造に注力します。
2015年には経済産業大臣に伝統工芸品に指定され、現在もアクセサリーやインテリア小物など、日用品や服飾雑貨として販売されています。
特徴
東京アンチモニー工芸品の特徴は以下のような特徴があります。
- 加工し易い柔らかさ
- 丁寧に彫られた繊細で美しい模様
- 一度に多くの製品を加工できるため低コスト
オルゴールやジュエリーボックスなど、どことなくレトロな雰囲気を感じることのできる美しい製品が数多く生産されています。また、アンチモニーは冷やすと膨張する性質があり、この性質のおかげで型の小さな隅まで埋まることにより、美しく形どられた工芸品が完成されます。
近年では、アンチモニー工芸に含まれる鉛は人体の健康に良くないとされ海外輸出の制限などの措置が取られるようになっていますが、環境に悪影響を及ぼさない鉛を使用した製品の開発が行われています。
作り方
東京アンチモニー工芸品の作り方について、日本の伝統工芸品 総合サイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方は日本の伝統工芸品 総合サイトの公式サイトをご覧ください。
鋳型
まず、木や石膏で作った原型を元にして砂型を作ります。出来上がった砂型に真鍮地金合金を流し込んで金型を作り、その金型を組み合わせて、ようやく鋳型が完成します。鋳型の善し悪しが製品の表面の滑らかさを左右するため、熟練の技が必要な工程です。
鋳型への彫刻
出来上がった鋳型に模様を彫り上げる作業は、アンチモニー工芸品の全行程の中でも最も熟練を要する作業です。模様を反対に彫り込めるように図柄を写し取り、魚子紋様などの繊細な模様を彫り込みます。
鋳造加工
鋳造方法には、焼き吹き、戻し吹き、冷吹き、地金吹きの4つがあります。
焼き吹き
300℃~350℃の炉の中で、地金が溶けて流れるまで鋳型を熱し、湯を注ぎ込みながら徐々に水で冷やしていく、最もメジャーな鋳造方法です。鋳型を水に浸して、鋳型内の温度を職人の勘で下げつつ、鋳型を傾ける角度により湯の流れと空気抜けの微妙な調子をとる技は、まさに職人芸です。
戻し吹き
湯を型の湯口より注ぎ込み、10~15秒後に型を逆さにして中の湯を外に空けることによって、型の内側に湯を貼り付けて成形する方法です。内部が空洞でザラ肌が残るため、置物や内張りを施す宝石箱などの製品に用いられます。
冷吹き
焼き吹きの水冷をしない簡単な方法です。小さな製品向けです。
地金吹き
溶解してある地金の上に型を浮かせて熱する方法です。こちらも小さな製品の鋳造に向いています。
まとめ加工
鋳造された製品は「まとめ屋さん」と呼ばれる職人によって、仕上げ加工が施されます。キサゲやヒッカキと呼ばれる道具を用いて、金型の合わせ目が目で見ても判別がつかなくなるまで製品を丁寧に仕上げ、まとめ上げて行きます。
研磨
次のメッキ加工に移る前に、製品の表面をしっかりと研磨します。研磨が十分に施されているかが、メッキの善し悪しを左右します。
メッキ
製品によって金、銀、銅のメッキ加工を施しますが、下地としてまず銅メッキが必ず施されます。下地の銅メッキの上に着色をして、錆止めのエナメルを塗装する場合もあります。
塗装
メッキ加工後、錆を防止するために透明な塗装を施して完成です。
お土産や仕入にいかがですか?
東京を中心に作られている伝統工芸品、東京アンチモニー工芸品についてのご紹介でした。アンチモンと鉛と錫を混ぜた合金により、柔らかさと冷やすと膨張する特性を利用して作られる繊細で美しい模様の東京アンチモニー工芸品は、アクセサリーやオルゴール、小物入れなど様々な製品に加工され人々の生活の中に溶け込んでいます。
お土産や仕入れに興味のある方はぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。