江戸時代に広く普及していたといわれている無形文化財である東京染小紋は、主に新宿区、世田谷区、練馬区で生産されている型染めのことです。細かく美しい模様が特徴的で、江戸時代には武士など高貴な身分の人々も東京染小紋を愛用していました。
経済産業大臣指定の伝統的工芸品にもなっている東京染小紋について特集していきます。
由来・歴史
東京染小紋の歴史はとても古く、時代は室町まで遡り最初は武士の裃への模様付けを行ったことがはじまりだと伝えられています。江戸時代になると武士の数が増えたことによって、必然的に東京染小紋の需要も拡大していきました。
また、武士にとって小紋の模様は自分の家柄を表現するために重要な役割を果たし、武士や大名が身に着けていましたが、次第に庶民の間でも広まっていき、東京染小紋が彩られた着物などが数多く生産されるようになりました。明治になると、欧米化の影響などにより男性の小紋使用率は減りましたが、女性の着物としては依然人気が強く、需要が伸び続けました。
種類
江戸小紋
伝統の模様の柄をふんだんにあしらい、単一の色で染めたもの
東京しゃれ小紋
型紙を何種類か使用した自由度の高いデザインのもの
特長
東京染小紋の特徴として、バリエーションが豊富な柄の種類の多さや、職人の技術の高さがうかがえる非常に細かい模様などがあげられます。400年以上も続く長い歴史を持つ東京染小紋は、緻密で繊細な型紙を彫ることのできる彫師の技術によって生産されており、派手さをおさえつつも落ち着きのある高級感を放っている伝統工芸品です。
江戸小紋の柄は小さければ小さいほど粋なものである、とされています。これは、江戸時代に幕府から贅沢なものがたびたび取り締まられることがあり、遠目からみれば無地に見えるほど細かい着物の需要が高まったことが影響しています。身分が高い武士ほど職人に細かい柄の着物をつくらせることができたため、最終的に江戸小紋の技術はより発展していくこととなりました。
作り方
東京染小紋の作り方について、日本伝統文化振興機構(JTCO)ウェブサイトから抜粋してご紹介致します。詳しく知りたい方は日本伝統文化振興機構(JTCO)公式サイトをご覧ください。
【1】 型紙の彫刻
良質の手漉き和紙を2~3枚、柿の渋で張り合わせた「地紙」に錐(錐彫り)、小刀(突き彫り・引き彫り)、道具(道具彫り)、などを使って模様を彫ります。
【2】 色糊の調整
色糊は染め上がりの出来栄えを左右する大事なものです。
地色と目色があり、はじめに糯粉と米ヌカを混ぜ合わせて蒸し、よく練った元糊に染料を入れ、試験染めをしながら慎重に作ります。【3】 型付け
長板に白生地を張り、その上に型紙を乗せ、ヘラで糊を置いていきます。
型紙の彫り抜かれた部分だけ模様が生地に型付けされます。染の最も重要な部分です。【4】 板干し
型付けができたら、貼り板のまま糊を乾かします。
多色の柄は繰り返し型付けをします。
こうするとで、より鮮明な柄に仕上げることができます。【5】 地色染め(しごき)
糊が乾いたところで、生地を板からはがし、染料の入っている地色糊を大きなヘラで、全体に平均に塗り付け地色染めをします。これを「しごき」といいます。
【6】 蒸し
地色が乾かないうちに蒸箱に入れ90~100℃で15~30分位蒸します。
糊の中に入っている染料を生地に定着させるためで、蒸し加減は熟練を要します。【7】 水洗い
蒸し上がった生地は、糊や余分な染料を落とすため念入りに水洗いします。
【8】 乾燥仕上げ
水洗いされた生地を乾燥させ、湯のしで幅を整え、丁寧に検品をして仕上げ、染め上がりとなります。
いかがでしたか?
江戸時代に広く普及していたといわれている東京染小紋についての特集でした。400年以上も続く長い歴史を持つ東京染小紋は、現在も着物や帯などが生産され、多くの人の間で愛されています。少しでも興味を持たれた方がいれば、ぜひ購入してみることをお勧めします。