天草陶磁器

天草陶磁器とは、熊本県天草地方で作られている陶磁器の総称です。天草陶磁器の原料である天草陶石は、自然豊かな天草の地で採掘され陶器づくりに非常に適している珍しい素材であり、日本一の陶石と呼ばれています。今回はそんな天草陶磁器についてご紹介します。

由来・歴史

天草陶磁器の始まりの年月は未だ分かっておりません。九州で最も古い磁器の産地であると言われている天草の地では、今から300年以上も前の1676年に天草島内の内田皿山で磁器が焼かれていたとの記録や、1762年に高浜村に住む上田伝五右衛門という人物が窯を開いたという記録が残っています。

1771年に平賀源内という人物が天草陶石を日本一の陶石であると絶賛し、天草郡代に報告しています。江戸時代、天草の地は幕府の領下だったため、庄屋が各々の村を統治するという体制を敷いていました。天草で採れる陶石を用い、庄屋たちは自分の村を豊かにするため陶磁器づくりに励みました。

それぞれの村が独自の焼き物づくりの技術を引き継ぎ、違う名前をもっているため、これらを総称して天草陶磁器と呼ぶようになりました。窯元は受け継がれていき、現在に至るまで数多くの個性あふれる陶磁器が生み出され続けています。2003年には伝統工芸品に指定され、伝統の技術を守り続けています。

天草陶磁器の種類

天草陶磁器は天草地方でつくられる焼き物の総称であり、様々な種類の個性ある焼き物が存在しています。

内田皿山焼

透明感を感じさせる白磁の製品をはじめ、青磁、素焼きのものまで幅広く生産されており、食器類などが人気です。また、タコつぼの生産量日本一を誇ります。

丸尾焼

丸尾が丘で採れる赤い土を原料に作られており、土の質感が味のある陶磁器です。

水の平焼

海鼠釉で有名な陶磁器です。個性的な絵柄、美しい艶が印象的です。

高浜焼

純度の高い陶石を使用しているため、まばゆい白さを持っており、深い藍色の呉須とのコントラストの美しい陶磁器です。

特長

天草陶磁器の特徴として、日本一と言わしめるほど高品質な天草陶石を原材料として製品が作られていることや、たくさんの種類の窯元でそれぞれ異なった魅力を持つ個性的な陶磁器が作られていることなどが挙げられます。

天草の地には数多くの伝統の技術を継承してきた窯元があり、技術を守りつつも現代の流行のデザインやモダンな作風を取り入れるといった試みもしており、とても見ごたえがあるため全ての窯元を回るのに1日では足りないほどだと言われています。

天草陶磁器の原料である天草陶石は、日本で産出されている陶石のうち約8割もの割合を占めています。そのため、天草陶磁器の原料としてだけではなく有田焼や清水焼などの有名な焼き物に作る際にも使用されています。また、焼き物だけではなく、宇宙船の耐熱材などをはじめ幅広い分野で使用されており、天草陶石が素材として秀でていることが見受けられます。

いかがでしたか?

熊本県天草地方で作られている伝統工芸品、天草陶磁器についての特集でした。日本一の品質を誇る天草陶石から作られる天草陶磁器は、多くの窯元や職人の手によって個性的な作品が数多く生産されています。興味のある方はぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。